歩き始めが遅い=発達の遅れ、その思い込みを検証する
1歳6か月児健診で歩行を確認する日本では、1歳で歩かないと焦ってしまう親が多い。だが正常範囲は生後9〜18か月ととても幅広い。歩き始めが遅れる本当の理由や、歩行器をあえて避けたほうがいい理由、実際に気にかけておきたいサインまで具体的に解説する。

支援センターの集まりで、隣の子はもうテーブルにつかまって上手に伝い歩きをしているのに、うちの子はまだハイハイばかり。そんな場面に居合わせると、つい焦りを感じてしまう。友だちの子や、上の子より歩き始めが遅いからといって、発達が遅れているとは限らない。ただ、違うけれど同じくらい普通のペースで進んでいるだけのことが多い。
親が誤解しやすいこと
多くの親は1歳を「歩き始めの締め切り」のように感じてしまう。育児の会話の中で「1歳になったら歩く」という言い方が繰り返し出てくるせいだ。実際には、主要な小児科のガイドラインが示す一人歩きの正常な範囲は生後9か月から18か月までと、1年近い幅がある。16か月や17か月ではじめて一人で数歩歩いた赤ちゃんは、締め切りを過ぎたのではなく、もともと幅の広い正常範囲の後半に位置しているだけだ。
もう一つの誤解は、歩き始めの時期が知能や運動神経など、ほかの能力を先取りして示していると考えることだ。歩き始めが遅い大多数の赤ちゃんにとって、そのタイミングはそうした能力を予測するものではない。多くの場合、性格や体格、それまでどんな移動方法に慣れてきたかが組み合わさった結果にすぎず、先を行っているとか遅れているという意味ではない。
なぜ実際に起こるのか
すでに別の移動方法が上手になっている赤ちゃんほど、歩き始めが遅くなることが多い。ハイハイの代わりにお尻歩きで移動する方法に慣れた赤ちゃんは、すでに行きたい場所へ行けているぶん、あえてもっと難しくて不安定な方法に切り替える必要をあまり感じない。
家族の傾向も実際に影響する。親や上の子の歩き始めが遅かった場合、同じような時期になることが多い。体格や性格も関係する。体重が重めの赤ちゃんは両足でバランスを取るべき重さがそのぶん大きく、慎重な性格の赤ちゃんは、家具から手を離しても転ばないと確信できるまで待っているだけで、体の準備ができていないわけではない。
実際に役立つこと
- 床の上で自由に過ごす時間を十分にとる。つかまり立ちや伝い歩き、手を離してみることまで、自分のペースで試せる場所をつくる。
- バウンサーや歩行器に座らせておく時間はほどほどにし、そのぶん練習できる時間を増やす。
- 歩行器は特に避けたほうがいい。階段からの転落事故が報告されており、消費者庁も注意を呼びかけている。アメリカ小児科学会は販売そのものを控えるよう提言し、カナダではすでに販売が禁止されている。歩き始めを早めてくれるわけでもない。
日本では母子保健法にもとづき、1歳6か月児健康診査で歩行の状況を確認することになっている。年齢を問わず気にかけたいサインもある。足を床につけても体重をまったく支えようとしない、1歳を過ぎてもつかまり立ちをしようとする様子が見られない、体の片側だけを明らかに使いたがらない、以前できていた動きが急にできなくなった、といった場合だ。どれか一つ見られたからといって問題があるとは限らないが、次の健診や診察のときに小児科医に伝えて確認してもらうと安心できる。
今日、少し床に座って、赤ちゃんが家具につかまって立とうとしているか、伝い歩きをしているか、じっくり見てみてはどうだろう。そうした様子が見られるなら、それはまさにこの時期にふさわしい成長そのものではないだろうか。
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