後追い:親が誤解しがちな3つのこと
生後8〜9ヶ月ごろ、それまで平気だった祖父母や他の家族に預けるだけで大泣きする「後追い」が始まる赤ちゃんは多い。実はこれは発達の後退ではなく、大切な認知能力が育っている自然なサインだ。誤解しやすい3つのポイントと、実際に役立つ関わり方を解説する。

それまで祖父母に抱っこされても、別の部屋でトイレに立ってもけろっとしていた赤ちゃんが、生後8〜9ヶ月を過ぎたころから、姿が見えなくなった瞬間に激しく泣くようになる——いわゆる「後追い」だ。それまで楽だった分だけ、急に何かが悪化したように感じる親は多いが、実はこの変化は赤ちゃんの発達がうまく進んでいる証拠であり、後追いそのものについて親が抱きがちな思い込みが、この時期をより大変にしていることがある。
誤解1:何か悪いことが起きたと考えてしまう
後追いが始まると「以前はもっと落ち着いていたのに」「何か不安にさせるようなことがあったのでは」と、赤ちゃんに問題が起きたサインとして受け止めがちだ。しかし発達心理学的には逆で、後追いはほとんどの赤ちゃんが通る、生後8ヶ月前後に見られる典型的な発達段階のひとつとされている。何かが失われたのではなく、新しい認知能力が育ったからこそ表れる行動だ。
誤解2:なぜこの時期に急に始まるのか理解していない
後追いが始まるタイミングは、「対象の永続性」と呼ばれる認知発達の節目とほぼ重なる。これは、目の前から人や物が見えなくなっても、それが存在し続けていると理解する力のことだ。この力が育つ前は、赤ちゃんにとって見えなくなることは文字どおり「存在しなくなること」に近く、親が部屋を出ても特に反応しないのはそのためだ。対象の永続性が育ってくると、赤ちゃんは「親はどこかに存在し続けている」と分かるようになるが、その一方で「どのくらいで戻ってくるのか」という時間の感覚はまだ十分に育っていない。「いなくなっても存在はしている」と分かるようになった段階と、「すぐ戻ってくると信じられる」段階との間にこのギャップがあるために、後追いという抗議の泣きが生まれる。
誤解3:こっそり離れれば泣かせずに済むと考えてしまう
後追いのつらさを避けようと、赤ちゃんに気づかれないようこっそり部屋を出る親は少なくない。しかし、これは短期的には楽に見えても、長い目で見ると後追いを悪化させやすい対処法だとされている。何の前触れもなく親がいなくなる経験を重ねると、赤ちゃんは「気づいたらいなくなる」という予測不能さのほうに不安を強めてしまい、「さようなら=ちゃんと戻ってくる」という信頼を築きにくくなる。長々とした別れの儀式にする必要はなく、「行ってくるね」と短く一言伝えてから離れる、というシンプルな一貫性のほうが、赤ちゃんにとっては「離れる→伝えてくれる→戻ってくる」という予測できるパターンとして積み重なっていく。
実際に役立つこと
短時間、別の部屋に行って戻ってくることを何度か繰り返す「小さな分離の練習」は、長時間の預け先にいきなり直面するより、少しずつ慣れる助けになる。毎回同じ短い挨拶を交わす、声のトーンを不安げにせず淡々とした調子にする(赤ちゃんは親の緊張を敏感に感じ取る)、そして「行ってくる」と言ったら約束どおり戻ってくるという経験を積み重ねることが、後追いの土台にある信頼感を育てていく。後追いは始まってから数ヶ月でピークを迎えることが多く、対象の永続性の理解に「戻ってくるまでの時間の感覚」が追いついてくるにつれて、多くの子は自然と落ち着いていく。
よくある質問
後追いはいつごろピークを迎えますか?始まってから数ヶ月の間に強まることが多いとされているが、個人差が大きく、時期や強さは赤ちゃんによってかなり異なる。
まったく後追いしない場合は心配したほうがいいですか?後追いの表れ方には幅があり、控えめな子も珍しくない。発達全体について気になる点があれば、次の乳児健診の機会にかかりつけの小児科医に相談してよい。
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